菩提の家
家族4人を想定したこの家は、コロナ禍以降人気急上昇中の秦野市に建つ。この地は駅からバスで20分ほどの場所の新しい分譲地で、周りには20棟ほどの新しい住まいが立ち並ぶ環境に建っている。私達と共に探して手に入れたこの敷地の魅力は北側に広がる山々である。山とこの敷地の間には現在は使用をしていない田畑が広がり、近所の子供達はその畑道を遊び場としている。山のぼりが好きな奥様と、その奥様に影響をされて自分も好きになったというご主人の楽しみは薪をわり、日を眺めながら寒い冬に心地の良い時間を過ごす事。山と縁側にいる事が好きな奥様が希望をされたのは、外で料理をしている気分にもなれる家。二人の共通する好みの雰囲気は山小屋のような家であった。一方で大雑把に作られた木の家は好まれていない事を私は、お二人の理想とする空間のイメージ画像を拝見していく中で発見をした。外とつながる縁側のような大きなウッドデッキのある家で、窓が解放される事で外の空気感がダイニング、キッチンにも広がる。繊細さのある山小屋のような住まいを目指し、計画は進められた。二人の要望を形にする為に私たちは今回も建物の配置を計画する事からはじまった。この敷地は変形地であり、大きな矢印のような形をしており、言葉ではその形を伝えきる事が難しい。配置を計画していると見えてきたのは、この変形がっても魅力的な形をしているという事だった。キャンプも好きだというお二人。駐車場の後ろには物置スペースを置くことのできる贅沢なスペースをつく事ができ、空いたスペースに建物を配置すると建物に面して二つの庭が出来上がった。どちらの庭にも吐き出しまどでアクセスできるプランも計画したが、開放感だけではなく落ち着きのある居場所感、空間という事も考慮して、ひつつの面は掃き出し窓でウッドデッキとつなげ、もう一方の庭は腰窓として、部屋から眺める事のできる庭となるよう計画をした。キッチンダイニングの先にあるウッドデッキは全開放できる大型サッシでつながり、ウッドデッキの向こうには、家族と友人を招いて過ごすには充分すぎるほどの庭が確保され、庭の先には田畑とお二人の好きな山々の景色が広がる計画とした。羨ましいまでの庭と眺望に面したウッドデッキには大きな庇を設けた。この庇があることでウッドデッキには安心感が生まれ、室内との連続性を演出する役目も担っている。薪ストーブが楽しみというご主人様のスペースはキッチン横であり、リビングソファー設置予定位置にも隣接する位置に計画をした。キッチンの横に位置させることで、薪ストーブで料理をしたい時にも便利な動線となり、ソファーに隣接させる事で、横になってくつろぎながらも火を眺める事ができるゾーニングとした。キッチンと薪ストーブエリアの床材を掃除のしやすさを考慮してセメント板とし、リビングダイニングのスペースの床をウッドデッキとの連続性を持たせながら、足触りも良いようにという事で杉の無垢フローリングを計画した。山道具も多いという二人の為に、玄関を入ったところの壁一面を収納スペースとして確保し、そのスペースの先に勝手口を設ける事で、洗ってから収納をしたいものの動線にも配慮した。この住まいの洗濯物干し場はクローゼットに隣接する。物干場は完全に室内化してしまう事で、雨の日にも安心して干しておける状況を確保した。室内化された洗濯物干し場には南に面した窓を設置した。物干場にはアイロンをかけることのできるスペースも用意し、家事の動線にも考慮をした。動線にも気を使いながら、田畑、そして山々を望む事ができる、贅沢な庭とつながる心地の良い時間を家族と、そしてご友人と過ごす事のできる住まいがここに完成をした。
- 用途
- 住宅
- 概要
- 新築
- 面積
- 敷地223㎡ 延床面積81㎡
- 場所
- 神奈川県
- 完成
- 2021年6月
- 設計
- 前田工務店
- 施工
- 前田工務店