片平の家
この家は神奈川県川崎市の郊外に建つ。私達と出会う前、お二人は予算の関係でマンションや建売を探していたが何かが違うと思い、戸建ての中古を探していた。HPを通じて私達と出会い、話しを進めていく中で注文住宅に的を絞り、ご予算にはまる土地を一緒に探す事からこの家づくりは始まった。一緒にはじめてまわった土地探し、そこで二人は運命の土地と出会った。その敷地は高台に位置しているため、見晴らしが良く、できたばかりの公園に面している恵まれた敷地だった。駅から敷地までは坂があり平坦な敷地ではなかったが、住まいに快適性を求めるお二人はその場でご決断。近くのコンビニエンスストアより土地買付けのFAXを入れるところからこの家づくりは始まった。二人が望まれたのは当然ながら、この素晴らしい高台から望む眺望を活かせる住まい。土地を見つける前から二人はそんな開放的な暮らしを望まれていた。一番の希望は「缶ビールを飲みながら空をボケっと眺められる時間があること。そしてお二人の可能であればという要望は平屋であった。またDIYが好きだという奥様は住まいにDIY作業のできるスペースを求め、ご主人様はゴロゴロできる畳スペースを求められていた。料理をしてお酒を飲んで、庭とつながるリビングでのんびりとした時間を過ごし、寝たくなったら寝る。そんな自由で贅沢な豊かな時間の実現がお二人からは求められた。
ご要望をご予算の中で最大限実現をする為に検討をしたのは、居場所の配置と部屋の構成である。DIYスペース、畳スペース、庭スペース、開放的なLDKスペースとそれぞれをそのまま形にしてしまうと建物のボリュームも大きくなり、予算をオーバーしてしまう事につながる。さらに平屋となると肝心な庭スペースがなくなってしまう。そこで私達が提案させて頂いたのは、玄関-LDK-庭とつながる平屋のような二階建てである。新しい住まいで過ごしたい時間は色々あるが、一人がふたつの以上のやりたい事を同時にする事は出来ない。そこでDIYをしたい時はDIYができ、庭とつながる空間でお酒を飲みながらのんびりと過ごしたい時はそんな時間を過ごす事ができる、フレキシブルな空間を提案した。この家は玄関の手前にDIYの「切る」という作業ができる前庭的スペースがあり、その先には玄関とLDKを仕切る大きな障子がある。LDKはその先に設けた庭とつながっている為、玄関とLDKを仕切る障子を開け放つと、前庭、玄関、LDK、庭がひとつの大きな空間としてつながる。同時に床の素材を前庭からメインの庭まで同じコンクリートで揃える事で、視覚的な連続性を生み出している。平屋がご希望だった為、LDK、水回りなど、生活に必要な要素は全て1階にまとめ、2階は寝るだけという構成にした。また、畳スペースを希望されていたご主人の為に、2階の寝室は全て畳スペースとした。2階の畳スペースと1階は吹き抜けを介して空間がつながっている為、2階で過ごしている時も1階の気配を感じることができ、平屋のひとつ屋根の下で暮らしているかのようの空気感を作り出している。1階に連続するコンクリートの床は特殊な設備を使用する事で冬場はそこで横になって寝転びたくなるほど暖かく、夏場はその特性をそのまま活かし、ひんやりと涼しい床となっている。視覚的な開放感と、冬は暖かく、夏は涼しいといった快適性を備える、ご夫婦のための酒場?笑が完成した。
- 用途
- 住宅
- 概要
- 新築
- 面積
- 敷地146㎡ 延床面積73㎡
- 場所
- 神奈川県
- 完成
- 2020年11月
- 設計
- 前田工務店
- 施工
- 前田工務店