角地の家
川崎市の郊外にあるこの家は、閑静な住宅街の一角に建つ。隣接する道路からは一段上がったところに宅地があり、敷地は東北の二面道路に面している。東面は道路向こうにも家がなくとても恵まれた環境にこの家は建っている。この地でご夫婦が求めたのは、庭で遊ぶ子供たちを室内にいる奥様が眺める事ができる家。庭に限らず室内も含めて子供たちがのびのびと暮らせる環境を求めていた。ご主人のご要望はリモートスペースがあり、庭を眺めなながらのんびりとくつろぎながら過ごせる家である事。ご主人は洗練された綺麗なデザインを好み、奥様は温かみのある程よい木の質感を感じる住まいを望まれていた。ご家族のご要望に応えるため、敷地に大きいな庭をつくり、その庭と一体感が生まれるリビングを計画した。今回はいつもとは少し違う点がある。それは外とつながる空間を求めながらも外で食事をしたいという要望はなかった点だ。少なくとも、この建物を計画していた時点では。二人は外に出るという事ではなく、庭で遊ぶ子供たちや、庭に植えられた植栽を眺めて暮らせる住まいを望んでいた。外には出ないが外を感じる事ができる家。それが今回のテーマとなった。室内に外感を少しでも多く取り込むために、リビングの幅に合わせて開口を設置。開口の幅が規格サッシの幅を超えていた事と奥様の好みに配慮し、リビングのメインとなる開口は木製建具とした。また、大きな開口をつくると耐震性の不安が出てくる。そこで私たちは大きな開口のある上部は屋根面のみとして、1階の間仕切り壁の多い範囲に2階を設置する事で耐震性を害わずに、リビングの大開口を設けることを提案した。木製建具は全て開放することができる。全てを開け放つ事で外とつながるリビングが完成するが、二人があくまで家の中にいたいと言っていた点と、建物強度の観点から途中、柱を一本残す事にした。この柱を一本残すことで他にもメリットはあった。それは外に向かって大きくかかる庇から柱がなくなった事だ。もちろん、庇に柱が落ちていて悪いことはないし、個人的にはそんな空間も大好きなのだが、今回はご主人のお好みに合わせると庇の下に柱はない方が良いと判断をした。ご主人は屋根のある車庫を望まれていた。車庫の上部はウッドデッキを設置し、庭のある芝面と繋げることで、庭空間の広がりを演出した。庭の先にある目隠しフェンスの高さは外から覗かれずに室内に圧迫感を与えない高さとした。完成後に奥様より今までと同じことをしていても幸せを感じる瞬間が多くなったという嬉しいコメントを頂いた。以前は朝なかなか起きてこなかったご主人は引っ越してきてからは朝起きて家中の掃除に留まらずに家の周りまで掃除をされていて、ご近所のママ友にも評判だという。住まいは人生そのものを豊かにしてくれるものだと私たちは信じている。大きくて動線が良くて明るくて。もちろんそれも大事な要素のひとつではあるが、本質的ではない。住まいは毎日の暮らしを心地の良いものにしていくべきだし、毎日幸福感を味わうことができる住まいに価値があると私は考えている。なぜなら、住まいは毎日を過ごすことであり、毎日の連続こそが人生そのものだからだ。奥様からのお言葉により、私たちの労は報われた。私たちはこれからも、そんな皆様の大事な人生を預かる仕事をしているという事に感謝し、更に成長をし続けて行こうと思う。
- 用途
- 住宅
- 概要
- 新築
- 場所
- 神奈川県
- 設計
- 前田工務店
- 施工
- 前田工務店