汲沢の家
この家は神奈川県戸塚市の郊外に建つ。西面道路で道路の向こう側も含めて、全て近隣住宅に囲まれている。求められたのは家族が好きなことを好きな場所で過ごしていても、いつでも家族のつながりを感じながら過ごす事のできる家。ご主人は折り紙が趣味という事で見せてもらった作品は私の知る折り紙の領域を遥かに超えていた。アート作品である。二人の娘様とお夫婦二人が心地良く自分の時間を過ごしながら暮らせる家をコンセプトにこの家の計画ははじまった。はじめに決まったのは、建物のボリュームをスキップさせて床のレベルに階層をつくること。1階2階の床のレベルに差が生じる事で生まれる隙間に、家族間の気配の連続性を期待した。レベル差を取り入れる事でどの部屋が何階なのかが曖昧になる。玄関横には高さを抑えた収納があり、その上部にはご両親のゲストルームを兼ねるご主人の折り紙スペース。この折り紙スペースは畳にする事で床座とした。その上部には子供のスタディースペースが続き、子供スペースの両サイドにはそれぞれの娘様の個室が隣接する。それぞれの個室には小さな小窓を設けて家族間のつながりを意識した。家族の気配がつながるという事をコンセプトに計画したこの家は、ディテールにもそのコンセプトを承継する。玄関入って正面にあるのは洗面スペースを兼ねる、裏庭への入り口だが、カーテンを開け閉めする事で、存在する領域の機能が変化する。洗面台は玄関の延長付近まで伸ばすことで、どこまでが何の部屋、領域なのかを曖昧にする事で空間のつながりを演出している。同様にキッチンの天板が延長してそのままダイニングテーブルとなり、リビングベンチは隣接するバルコニーのベンチへと連続する。スキップした子供スペースはリビングよりも少し高い位置にある。つながる空間に段差がある事で各居場所の機能を満たしながら気配は連続する空間となっている。限られたスペースに機能を詰め込むとそれぞれの空間が狭くなってしまう。そこで床レベルに変化をつける事で、空間の気配をつなげながらも機能を満たす事が可能となった。つながりをコンセプトにしたこの住まいが、未来にどのように繋がっていくのか。楽しみな住宅が完成した。
- 用途
- 住宅
- 概要
- 新築
- 面積
- 敷地144㎡ 延床面積92㎡
- 場所
- 神奈川県横浜市
- 完成
- 2017年5月完成
- 設計
- 前田工務店
- 協力
- 成島建築設計
- 施工
- 前田工務店