倉見の家
神奈川県寒川町の大通りから1本入った、住宅街にこの家は建つ。南道路で間口は7.4mで奥行きは25mと縦長の敷地で南面以外の東西側は近隣住宅が建ち、北側には3階建てのマンションが接近してところに建っている。南面の道路を挟んだ向かい側には、3階建て程度の高さの工場兼住居が建ち、敷地に建つと視線の抜ける先はどこも近隣住居である。サーフィンが好きなご主人様とカリフォルニアが好きな奥様が求めたのは、休日をのんびりと過ごす事ができる、リビング中心の心地良い家。ご主人様はリビング脇でゴロゴロできる畳スペースと、ビールを飲みながら、七輪でお肉を焼ける庭スペースを強く希望され、それさえあれば後はローンを払うだけだと言っていた。仕上げのイメージは、ざっくりとしたもので飾りっ気が良い意味で無く、肩肘はらずにリラックスできるような素材を求めているように思えた。奥様は洗濯動線を特に気にしていた。その他は特別強いご希望はなく、お施主様の言葉から連想するこちらの言葉に耳と夢を傾けてくれていた。お施主様のイメージを形にするため、はじめに行ったのは、敷地に対して建物の配置をどうするかという事であった。量よりも質をコンセプトに家づくりをさせて頂いて要る住まいは他の家に比べて面積が小さくなる。そこで違和感が発生。いつも私達が手掛けているものよりも敷地は面積が大きい。そこにいつも通りの建物ボリュームを配置すると、敷地に対して建物がやけに小さく感じるのである。敷地の図面が間違っているのではと何度も確認をしたが、合っている。しかし、私共は日頃から伝えている事がある。「建物が小さくなれば、その分庭ができます」。その通りであるがいつもよりすごく広い。しかし、気付いた。お施主様が求めているのは、心地良い休日を過ごせる住まい。ビールを片手に七輪で肉を焼き、畳ゴロゴロしながら過ごすご主人。庭で遊ぶ子供。ご主人様と子供の気配を感じながらリビングでくつろぐ奥様。そんなシチュエーションにこの広い庭が似合いすぎるのである。多くを望まず、ただただ、気持ちの良い居場所を求めるこのご家族の為に、この広い庭に面した気持ちの良い居場所をシンプルに建物に落とし込む事にした。庭+ウッドデッキ+ビール+七輪+畳。このキーワードが似合う、このキーワードに限定した住まいが今回の住まいである。お施主様DIYの最中、現場に行くとほぼ毎日のように現場にいる、ご夫婦のお友達。みんなでこの庭でBBQをするとお友達とご主人は盛り上がっている。庭とつながる事でとても開放感を感じる室内。庭と建物の間にある半屋外的なデッキスペース。お引渡し間際に数時間を過ごさせて頂いたが、気持ちが良すぎる。お友達と中が良すぎるご夫婦。二人が家に帰るとお友達が先にお肉を焼いている。そんなこともあるのでは?と心配になる。この気持ちの良い大きな庭で。
- 用途
- 住宅
- 概要
- 新築
- 面積
- 敷地185.23㎡(56坪)延床面積75.15㎡(22.73坪)
- 場所
- 神奈川県寒川町
- 完成
- 2019年6月
- 設計
- 前田工務店
- 施工
- 前田工務店
- 写真
- 山内紀人