「岩瀬の家」
鎌倉市の住宅地にあるこの家は、特定のエリアを定めて土地探しをされていたご夫妻のために建つ。ご予算の中で巡り合った敷地は、周囲をほぼ360度住宅に囲まれ、視線も距離も近い環境であった。その一方で、奥様が思い描いていたのは、1階にLDKを置き、庭と地続きで過ごす日常である。鎌倉という場所性への憧れと、閉じた敷地条件とのあいだに、静かな緊張があった。
この敷地で私たちが向き合ったのは、大きく開かずとも外を感じられるか、という一点である。自然を感じながら暮らせる家。それが今回のテーマとなった。隣家が迫る中で外に向かって広がる庭を求めるのではなく、室内にいながら緑を受け取る関係へと発想を切り替えた。庭は「使う場所」ではなく、「日々目に入り、季節を知らせる存在」として読み替えたのである。
具体的には、リビングの床を一段下げ、椅子に腰掛けたときの視線を意図的に低く抑えた。低い位置に設けた窓の先には、細長い植栽帯を添え、道路越しに並ぶ住宅の輪郭を葉の重なりで受け止める。視線を遮るのではなく、やわらかく滲ませることで、外との距離を詰めすぎない関係をつくっている。限られた奥行きの中でも、窓の高さと床の段差によって、庭を仰ぐような感覚が生まれた。
植栽が育ち、葉が重なり合う頃、正面の家は背景へと溶けていく。LDKで、外の植栽をゆっくりと眺めながら、家族それぞれが段差や窓辺に居場所を見つけ、同じ空間にいながら別々の時間を過ごす。そんな時間がいつまでも続く心地よい住まいにこれから時を経るごとに完成へと近づくことがとても楽しみな住まいが完成した。
- 用途
- 住宅
- 概要
- 新築
- 面積
- 敷地106,53㎡ (32坪) 延床面積84,26㎡ (25.53坪)
- 場所
- 神奈川県鎌倉市
- 完成
- 2022年1月完成
- 設計
- 前田工務店
- 施工
- 前田工務店













































