栗原の家
神奈川県座間市に建つこの住宅は郊外にある住宅地の新しく分譲された高台に建っている。西面道路から階段をのぼり敷地にたどり着く。高台に位置しているこの敷地は2階から羨ましい限りの夕日と山脈を眺望する事ができる。小さい頃から人の集まる家を建てるのが夢であったと語る奥様。現在のお仕事は住宅再販会社の設計をしている。価値観の合う工務店がないと悩んでいる時に、職場の同僚に薦められて前田工務店を知り、私達に依頼を頂いた。そんな奥様が希望されたのは、人の集まる家。小さな頃からよく家に人が集まっており、自分も大きくなったら人の集まる家を建てたいと、ずっと想いを巡らせていたという。そんな奥様は人が集まった時に、そして家族で、プライバシーを気にする事なく、存分にその時間を楽しむ事ができるプライベートバルコニー空間を希望されていた。バルコニーには外用のソファーを設置して、夜の照明と星空に身を包み、ご主人とそしてご友人との楽しい食事やお酒の時間のある暮らしを望まれていた。内装はシンプルでナチュラルなあきの来ないデザインを好まれた。ちなみに奥様は収納アドバイザーの資格を持つ。ご主人は趣味でやっているドラムスペースを希望された。電子ドラムのため、防音室までの設備はいらないが、ものを叩く音を気にせずに心置きなく好きな時間を過ごすことのできるスペースを希望されていた。話しを聞いていて私たちは極端ではないが、建物にある程度の大きさが必要だと考えた。人が集まりやすい場所にしたかったからだ。私たちがつくる家の場合、空間を繋げながらつくるため、人が集まるのにそれほど大きな空間は必要はないのだが、お二人のご希望とご要望をお聞きする中でそれが必要だと感じ、いつもよりも少し、ボリュームを広くとった空間を提案した。家は大きくすればするほどとうぜん費用がかかる。一方で予算は決まっている。今回は少し大きめにつくるためにどこかで減額をする必要があった。そこで今回は造作(大工さんの手仕事で行う作業)を極力減らし、既製品を奥様の好みに合わして選択をする事で、予算内でご希望の空間が形になるよう試みた。家の構成は1階にげんかん、主寝室、子供室2部屋(後々分割)、ドラムスペース、トイレ、洗面室、浴室、クローゼットを配置し、2階にはリビングと眺望バルコニーとなっている。キッチンの正面に位置するダイニングスペースからには大き過ぎない窓を寄り添わせ、視線の先に豊かなバルコニースペースを望める形とした。しかし、出来上がって見るとダイニングの位置に第二のソファーを設置しても良いと思えた。バルコニーへの視線の抜けが想像よりもはうかに良かったからだ。そこからの視線の抜けは元々良くなるように計画をしていて、形になったものは当初計画をしていた通りになったのだが、いざそこに身を置いてみると、ソファーがあったら良いと思えたのだ。実際にはどこにどんなものを配置しているのか、それはまだ引っ越し後に訪ねることができていない為わからない。ただ、住まいにはそんな自由度があって良いと思った。いつもは造作が増えるため、居場所が決まって来ることが多いいのだが、今回は手数を減らすために造作を控えた結果、自由度のあるおおらかな空間が完成をした。いつもは経年変化などの事も考え、造作を多めにしているが、そればかりが良い空間の条件ではないという事を確信する事ができる機会となった。どこにどんな家具を配置してどう暮らすか。それは住まいての自由である。私たちはそこで暮らされているお施主様に心地が良い、この家で暮らせて幸せすぎる。と、ただそう思ってもらえれば良い。お引き渡し後奥様より、家が心地良過ぎて仕事に行きたくなくなるというメールを頂いた。仕事に行かなくなっては困るのだが、なんとも嬉しいメッセージである。どんな暮らしを楽しんでいるのか、拝見できるのを楽しみに今度、訪ねさせてもらおうと思う。
- 用途
- 住宅
- 概要
- 新築
- 面積
- 敷地172.55㎡ 延床面積95㎡
- 場所
- 神奈川県
- 完成
- 2021年7月
- 設計
- 前田工務店
- 施工
- 前田工務店