磯部の家
神奈川県相模原市に建つこちらの住まいは、圏央エリア、相模川を一望できる高台にある。まるで天守閣からの眺めのようなこの景色を取り込むという事から計画は始まった。1,2階共に望める景色は、羨ましい限りの絶景であるが、より眺めの良い開けた方をメインのリビングダイニングキッチン、1階に寝室、水廻りという構成とした。子供室はキッチンとリビングの上部に位置するロフトとした。子供室へは2階のリビングを通過しアクセスする。また、子供室はダイニングの上部をまたぎ2つの入口を確保。2つの入口を設け、ダイニング上部をまたぐ事でロフトに離れ感を演出。南北に近隣の住居が建つこの敷地で光を確保するために、ダイニング上部に小さな吹き抜けをつくり、北側屋根にトップライトを設け光のたまり場を確保した。リビングの横には、景色を一望できるデッキテラス。デッキテラスは屋根・壁を設け、外部でありながら室内のような雰囲気をつくりだした。リビングより一段あげたデッキテラスのフロアレベルは、一本引きの大きな窓を全開放する事で、リビング側からベンチのように使用する事も可能。屋内化した外部テラスとリビングはひとつの空間として存在し、窓を開口する事でリビングにいても、屋外にいるような居心地のスペースになるよう計画をした。寝室・収納・水廻りがある1階は用途のある部屋・スペースを入れ籠状に配置。入れ籠状の居場所の周りには通路を確保し、その周りを回遊できる構成となっている。決して大きいとは言えない延床面積の住宅に入れ籠をつくり、回遊する通路を設ける事は、一見図面で見ると決して有利な手法には思えないが、実際形にすると八の字に動けるその動線から面積の何倍もの広さを感じることができ、使いやすさ、そこを通過する楽しさ、便利さをも確保する事ができた。また1階の入れ籠は構造壁を最小限とし、一部一面を除き全て非耐力壁となっている。20年経過した住宅の価値はゼロという時代から良い家には価値をという時代にシフトしようとしている今、数年後に万が一住まい手が変わった時に壁を全て取り払い、新しい間取りの構成も可能なつくりとした。限られた住宅面積の中で、壮大な景色を望める、そして外部と一体となれる大らかな空間と、入れ籠状の周りを回遊できる豊かさ、迷路のような楽しさ、そして秘密基地のように一人になれる籠もれるスペース。気分に応じて様々な居場所がある住まいが完成した。
- 用途
- 住宅
- 概要
- 新築
- 面積
- 敷地面積117㎡(35.62坪)
延床面積78.66㎡(23.79坪) - 場所
- 神奈川県相模原市
- 完成
- 2018年5月
- 設計
- 前田工務店+あおいも
- 施工
- 前田工務店
- 写真
- 山内紀人